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日本人は、これまでに人気者というものをもったことがなかった。義経においてはじめてもった」司馬遼太郎の小説義経より

中学生が学ぶ鎌倉時代の有名人「源義経」は、人気者だった。日本にはそれまで「偉い人」はいたし、各分野での「実力者」はいたが、「多くの人々に受けがよくて、もてはやされる人」はいなかった。義経が初めてなのである。なぜ人気があったのかというと、軍事的天才のためである。誰もがなしえないと思っていた平家追討をたった1年の間に成し遂げてしまったのである。

もともと平家は西国では強かった。本拠地の上、海軍ももっていたから。現に義経以外に源氏は、義仲も範頼も全く歯が立たなかった。それなのに義経が大将になった途端、あっというまに勝ってしまったのである。野球にたとえれば、それまで全く打てなかったピッチャー平家に対して、バッター義経は三連続ホームランを打ったのである。一の谷、屋島、壇ノ浦における三連勝は平家の側からいえば、負けるはずのない戦いであり、第三者から見れば奇蹟の勝利だったのである。